2006年5月のギリシャ巡礼

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最近、mixiに自分が書いた記事を検索していたら、結構面白いのが出てきた。

これはギリシャ滞在中のお話し。アテネ近郊の修道院のお祭りがあった時に、

熱心なギリシャ正教徒の友達に巡礼に連れていってもらった時の記事だ。

今から8年以上前なので、自分も若いし(当時は目の周りを黒く塗ったゴス・ファッションに凝ってた)、

感性もみずみずしいなぁと思ってよんでしまった。

ギリシャ巡礼の貴重な記録として残しときます。

2006年5月の日記

昨日の夜、ネアマクリ(アテネからバスで1時間)にある聖エフライム修道院に行ってきた。この修道院ではエフライム(1384-1426)という修道士を 聖人として祭っている。5月5日はエフライムがオスマン軍(トルコ人と表記してあったけど)により処刑された日で、大きなお祭りがある。どんな感じで典礼 があるのか興味があったので、熱心な正教徒の友達に誘われて行ってみた。

典礼は夜九時から始まる。1時間まえに着いたのに、修道院は人でいっぱいだった。かなり有名なお祭りらしく、この日に世界中からギリシャ正教徒が 修道院に集まる。特にキプロスからが多いんだとか。典礼まえに修道院を散策してみると、聖人が吊るされた木が残っており、その近くに彼がどのように「トル コ人」によって処刑されたかが絵で説明してある。木のほかに、小さな受胎告知教会や聖水・聖油配布所、お土産屋なんかもある。本日は巡礼者が供え物として パンや花、油や絨毯などを持って来る。巡礼者から集められたパンは手際よく、他の巡礼者に配られる。

本堂には聖人の骨が安置されている。中に入ると、ガラス張りの棺の中に修道服をまとった聖人の死骸が横たわっていて、巡礼者が花を手向けている。 たまたま私がその日に持っていたバックに骸骨がプリントされていて、巡礼者のおばさんに「なんて素敵なデザインなんでしょー!」とほめられた。「これはゴ シックです。」と説明しても通じなかった。

巡礼は9時から始まったけど、本堂は人でいっぱい。座るところがない。本堂2階は女性専用席になっているので、友達とそこで席を探した。ここも巡 礼のおばさんでいっぱい(おばさんどころかおじさんもいる)。それでも外はあまりに寒かったので、入り口付近に無理やりスペースを見つけて床に座り込ん だ。膝を抱えてやっと座れるくらいのスペース。注意しないと隣の人に肘が当たってしまう。床はコンクリートで固くて冷たい。通気性の悪い部屋。こんな状態 で典礼は夜9時から始まり、朝4時に終わるのだ。

信仰心の無い私は、きっと難民船に乗るとこんな感じなんだろう、、、と勝手な想像をしながら、奥の方からかすかに聞こえてくる典礼に耳を傾ける。 典礼が始まっても外から人が入ってきて、すでに満員の空間に無理やり割り込んでくる。入り口付近のおばさんが 「もう誰もは入れないわよ!無理して入って も無駄よ!」と怒鳴り、入ってきたおばさんは「あんたは中にいるから良いじゃないのさ!私たち外にいたら凍えちゃうわ!」と怒鳴り返す。こうして、典礼中 幾度となく怒鳴り合いが繰り返される。

こんな緊迫状態にも関わらず、何時間も経つと周囲に連帯意識みたいなものが出来てくる。トイレに行く間に自分のスペースをキープしてもらったり、 座るところのない人に一時的に席を譲ったり、「どこからきたの?」とかお喋りをはじめたり。夜2時くらいになり、皆の疲れはピークに達してきた。奥の方 で、「ギャー!」と叫び続ける声がする。近くのおばさんの話では、毎年デーモンにとりつかれた人が来ていて、あんな風に叫ぶんだとか。

皆の疲れを察してか、毎年4時まで行われる典礼は2時で終わってしまった。始発のバスが出るのは朝4時半。かなり時間があるので、各地から集まっ た巡礼者はお喋りを始める。信仰心強い人、マリアのお告げを受けたという人が真面目に話をしている。まあ、面白い話なんだけど、、、そんな話ばっかり聞い ていると、私のギリシャ語思考力が完全に麻痺してくる。最後はもう逃げた。それでも友達は全体的な巡礼に対し、深い感銘を受けたらしく「古代、私たちは優 秀な民族だった。なのにトルコ人が来て私たちをかき乱した。」とか大真面目に語り出した。彼女とはこの話題で何度も気まずくなったので、最近は無視するよ うにしている。

4時半になり始発のバスが出る。しかし、このバスを待っていた人は私たちだけでない。100人近くがバスに群がり、押し合いへし合いでバスに乗り 込む。こんな巡礼が毎年行われていて、事故が起こらないのだから不思議だ。巡礼者は高齢の女性が多い。寒い夜に、こんな試練を乗り超えなければならないの だから大変だ。しかしそんな試練があるから、巡礼というものに意味があるのかもしれない。

ブログ再開宣言

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ずいぶんブログを放置し、気が付けばもう3年以上、、、。自分のギリシャ研究メモとしてブログを始めましたが、ここ3年は全く違うことをしていました。が、しかし!運命のいたずらで再びギリシャ研究に携わる日々が(なぜだか高知県で)今年の4月から始まっております。とりあえず、12月はギリシャではなくイスタンブルに行ってきます。できるだけ続けられたらいいな、という宣言です。